ヨガ インストラクターのブログ

愛する人を失うということ。

週明け月曜日の東京は時折薄日がさすものの、
どんよりと肌寒いです。

昨日FBにつぶやいてしましたが......。
約30年前にお仲人をして頂いた、
当時の夫の上司である方の奥様が亡くなり、
ご葬儀より2ヶ月近くたち、
ようやくお線香をあげに伺うことができました。

上司の方は86歳、亡くなられた奥様は
79歳でした。

それならば......あきらめもつく相応の
ご年齢では?と一般には思われることでしょう。


ですがこの方。
最初の奥様を難病で。
ついせんだっては溺愛されていた
わずか小学校1年生のお孫さんを。
そして2ヶ月前に。
オシドリ夫婦とはこのことかという、
仲睦まじくされていた奥様を
たいへん症例の少ないがんで亡くされました。

心から愛する方を、
しかもご自身より年若い方を3度も、です。


この方は(Mさんとお呼びしておきます)......、
高度成長期技術大国ニッポンを支えた、
科学技術分野の戦士です。


日本が明日どうなるかわからない
戦後間もない時期に
科学者を志しアメリカに留学され研鑽を積み、
高度成長期の日本の研究分野を企業人として
支えられました。

管理業務につかれてからは若い世代の才能を
発掘し育てようと、生来のマネージメント能力を
発揮され、科学研究分野戦隊の頼もしい切り込み
隊長のような方でした。


その方が上司であった頃
(その頃ぺーぺーの夫には、はるか雲の上の上司でありましたが)
夫もある製薬会社の研究員でした。
けれどどうしても大学院に戻り、勉強をし直したい
気持ちを持っていたところ、
この方のバックアップで当時勤めていた会社から
奨学金等の援助を受け、
医学部修士博士課程での6年間をなんとか修了し、
学位を修得。
がん研究分野の第一線
働くことができるようになりました。


私たち夫婦はそんなわけで夫が大学院生のときに
結婚したので、経済面では心も財布もご夫妻に
砕いて頂いた記憶ばかりです。

鎌倉にある瀟洒なお宅や北軽井沢の別荘で、
いつも奥様の手料理をごちそうになるばかりでした。

果たして暫くぶりにお会いしたMさんは、
面差しがわからぬほどお痩せになっていました。

元々たいへんご自分にも、周囲にも厳しい方です。
ねっこのお気持ちはたいへんたいへん優しく温かい方ですが、
同時に上位を目指して常に努力をされ続ける方なので
『昭和の星一徹』のようなきびしさ。
毒舌ぶりも超一流です。

愛する方を失うような深い悲しみも、
いつも唇を噛み締めて、
きっとずっと血が流れ続けるほど噛み続けて我慢をされ続けてきた
と思います。

その方の涙や。

ご自身もなくなって消えてしまいたい
という言葉は。

雪に変わる前の冷たく刺すようなみぞれが降り続けるように

空気をしんしんと凍らせました。


私たち夫婦と一緒に昼食をとりたいというMさんのご要望が
あったので、私は早朝からお弁当を作りました。
ところがご一緒にお話しながら食べた料理は
すべて味がありませんでした。

猛烈に急いだから大失敗したなと思いましたが、
帰宅して残りを食べると、
真面目にお出汁からとって作ってるので
まあまあの出来映えです。

その場にいた人たちの悲しみと緊張の空気を料理が吸って、
味がすべて死んでしまったのかと思うほどです。

☆☆☆

自分より若い人の死は受け入れがたいものです。

それが自分の伴侶だったり。
ましてやこどもであったりということは、
あってはならないことなので、
『存在しない』こととして人は考えません。

でも人生、あってはならないことを経験される
方はどれほどいるでしょうか......。

そして現時点では遭遇していない
私のような存在もいます。


そして私のようなものは、
その悲しみをわからないなりに、
ほんのほんのわずか、こうやって学ばせて
いただくのだろうと思いました。


そしての悲しみと闇が深いのは、
それほどに愛せる方に出会えた素晴らしい
人生であった証でもあります。


☆☆☆

10月6日になりました。
今朝は朝日がキラキラの秋晴れです。

ノーベル賞受賞のニュースが日本を駆け巡り、
なんと朝8時過ぎ、NHKの朝ドラ真っ最中にMさんの
からの突然のお電話。それも興奮しておられる。

どうやら科学者としての観点からは
今回の受賞に納得できないようで、
不肖の弟子である夫にぶちまけて共感して欲しかった
ようです。


もちろん夫はすでに仕事場に向かっており不在。
ところが夫、生来のおバカぶりを発揮して財布を忘れ、
家に戻ってきたのです!!

すかさず電話を(1分ほどですが)書け直すことができました。

今Mさんは亡くなられた奥様の遺作展を開くことを
気持ちの支えとしようとなさっているようです。
ご夫婦ともに墨絵や書、陶芸を楽しんでおられたので、
これが生きる杖となるのは素晴らしいことと思います。

研究やアートはすぐにお金を生み出すものではありません。

というか。

むしろ穀潰し的な?扱いで、
経済状況の悪い日本では利益を生まない研究機関は売り払われ、
アートを支えるお金を払う企業も激減したことでしょう。

でもね、今朝の日本、ノーベル賞受賞に元気づけられ方も
たくさんいるでしょう。
(あるいは怒る?ことでエネルギーを鼓舞する方もおられたか?)
研究やアートはすぐ明日の米粒にはならないけれど、
長い熟成期を経て、こんな風に人の気持ちを支える力に
なるんですよね。


















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